いちのせきミート 【ドイツ・マイスター・クラフト・ソーセージ】

2026/08/15 17:00

 

教科書の一文に、手が止まった


先日、ドイツの食肉加工の教科書を読み返していて、充填の項で手が止まった。
「一般に、人工ケーシングは天然腸より強く張るまで充填できる」という一文。

つまり、パンパンに詰めやすいのは人工ケーシングの方だということになる。作業効率だけを考えるなら、人工ケーシングの方が扱いやすい場面がありそう。それでもうちは天然腸を使い続けています
改めて考えると、その理由を自分の言葉で説明できていないことに気づいた。

なぜ、天然腸を使い続けるのか

疑問はひとつに絞る。「強く張れて扱いやすい」人工ケーシングがあるのに、なぜ天然腸を選ぶのか。

マイスターに聞いてみます。
「充填のしやすさと、噛んだときの弾け方は別の話だね~。」とマイスターは言う。

「人工ケーシングは文字通り、均一に作られているので、張りの調整はしやすい。
 ただ、食感は素材そのものの性質に左右されるからね~。いわゆる普通のソーセージにおいては、
 あくまで ね、あくまで、”個人的” には、好きじゃない。


同じ教科書には、ケーシングの種類が製品ごとに書き分けられている。
羊腸を使うWiener、 Laufdarmを使うKnacker、 リングケーシングを使うFleischwurst。
そしてKochsalamiのように、繊維でできたケーシング(Faserdarm)を使う製品もある。
天然のものと、工業的に作られ
たものが、最初から使い分けられている構成だった。


「張りやすさ」と「食感」はトレードオフだった

さらに読み進めると、燻煙の項に「小径のソーセージでは、煙の膜がケーシングより深く浸透しないようにする。ただし剥皮用ケーシングは例外」という記述が。
剥皮用というのは、加熱・燻煙のあとに取り除くことを前提にしたケーシングのこと。つまり、そもそも食べる部分ではないケーシングも存在する。魚肉ソーセージをイメージしてもらうと良いかもしれない。

「剥皮するケーシングは、成形のために使うイメージかな~」マイスターは説明する。
「天然腸は、食べたときの食感が重要
。だから、天然がいい、人工がだめっていう訳では無くて、
 適材適所で使い分ける感じだね~。』
「うちでは日本の多くの人に食べてもらうために、馴染み深い天然腸を使用した製品が多い。」

この話を聞いて、天然腸にこだわる理由が少し具体的になった。人工ケーシングが劣っているわけではなく、目的が違う道具なのだ。うちが作っているのは、皮ごと食べて楽しむタイプのソーセージだから、天然腸を選んでいる。

小さな工房だから、腸と向き合う手間を取れる

天然腸には、人工ケーシングのような均一さがない。
1本ごとに太さや強度にばらつきがある、と教科書は繰り返し書かれている。人工ケーシングを使えば、その手間はかなり減らせるはず。

うちは枝肉豚肉を当日中に手作業で解体している、小さな工房。原料の状態を見ながら判断する場面がもともと多い。
天然腸のばらつきと向き合う手間も、その延長線上にある作業だと捉えています。均一な人工ケーシングを選ばなかったのは、効率よりも食感を優先した結果であって、天然腸の方が絶対に優れているという話ではありません。

地ビールフェスを前に、食べ方のひとつ

8月21日から23日にかけて、一関では今年も地ビールフェスティバルが開かれます。うちも毎年ブースを出展しています。天然腸のソーセージは、強い直火で一気に加熱すると皮が破れやすいですが、香ばしさも楽しめます。
美味しいビールと一緒に是非食べて頂きたい。

今回の記事で紹介するのは、ペールエール専用 ハムソーセージセット(2,800円)。ビールに合わせる組み合わせを想定して選んだ品目のセットで、天然腸を使ったソーセージも入っています。
特にブラートヴルストは、ドイツ屋台の定番のソーセージで、ヴァイツェン系のビールを手にしたら、
必ず合わせて下さいね。


記事で紹介した商品はこちらです。


腸の種類による違いを聞いてみると、まだ聞けていないことの方が多いと気づきました。
うちの商品ごとにどの腸を使い分けているのか、今度まとめて聞いてみようと思います。